5歳以降(小学校入学後)の特別支援プロセス

重要:イングランドの支援体制や支援につながるまでのプロセス・関わる職種の名称は自治体ごとに大きく異なります。こちらに記されている全ての情報はイングランドの法律ならびに政府が開示している規範やガイダンスをもとに作成されており、ごく一般的な流れの解説をおこなっております。また、現地において信頼性の高いとされる情報リンクを許可を得たうえで掲載しております。より個別的な支援詳細については必ずお住いの自治体の情報を確認してください。
(最終更新日:2024年12月8日)

※レセプションクラスにおける評価及び支援はEYFSおよびSEND規範を枠組みと 
していますが(レセプションの基盤となる教育システム詳細は保育施設での特別支援プロセスをご確認ください)、その支援体系については在籍するSchoolに従うことになります。
※このページでは入学後に特別支援の必要性が特定され、支援プロセスを一から構築していくという前提で解説しています。
※保育施設からすでにEHCPを所持している場合やEHCP未取得であってもお子さんが明らかにSENのサポートを必要としている場合、入学前の段階から学校のHead TeacherやSENCOと保育施設やエリアSENCOが協働して引継ぎをすることがあり、このプロセスとは一部異なる場合があります。

法律や実践規範が定める特別支援(SEN)に関しての方針

学校はSEND実践規範に従わなければならないと法的に定められています。具体的には地方自治体によって資金提供を受けている特別支援学校(Special School)ではない学校(Mainstream Maintained School:現地公立校)や特別支援学校ではないアカデミー、16~19歳のAcademy、代替教育機関、生徒紹介ユニット(PRU)を指します。
SEND実践規範の適応外
私立学校(Independent Maintstream School)や児童家族法Section41の基に教育大臣によって承認された私立の特別支援学(Independent Special School)および16歳以上の特別支援教育機関リストに掲載されていない私立特別支援学校、すべての生徒が一時的にイングランドに住んでおり、別の国のカリキュラムに従って教育を提供している学校(いくつかの例外あり)は、SEND実践規範に従うことは求められていません。ですが、その他の私立学校に関する教育法や平等法に関しては従わなければなりません。

SENの具体的な内容・分野

Communication and Interaction
他者とのコミュニケーションについての困難と支援についてを指します。具体的には、「自分の思いを言うことができない」「話されていることを理解できない」「社会的なコミュニケーションのルールを理解したり使ったりできない」などが挙げられます。これらに関しての具体的な内容は時間とともに変化することがあります。

Cogniton and Learning
学習の困難と支援を指します。「学習の困難さ:Learning Difficulties」は軽度の学習困難(MLD)から重度の学習困難(SLD)まで幅広く定義されています。SLDを持つ子どもは、すべての学科で支援が必要なことが多く、運動能力やコミュニケーションに関連する困難を伴う場合があります。さらに、深刻で複数の学習困難(PMLD)を持つ子どもは、学習困難に加えて身体障害や感覚障害を持っている場合があります。 特定の学習困難(SpLD)はディスレクシア(読字障害)、ディスカリキュリア(計算障害)、ディスプラクシア(運動機能障害)などの状態も含み、学習の特定の側面に影響を与えるとされています。

Social, Emotional and Mental Health Difficulties
社会的・感情的な困難と支援を指します。例えば、引きこもりや孤立、または挑戦的・破壊的な行動、あるいは不安を引き起こす行動が見られることがあります。これらの行動は、背景に不安やうつ、自己傷害、物質乱用、摂食障害、または医療的に説明がつかない身体的な症状といった精神的健康の問題が隠れている場合があります。また、注意欠陥障害(ADD)や注意欠陥多動性障害(ADHD)、愛着障害などを抱える子どもや若者もいます。学校は、子どもや若者のために明確な支援プロセスを持つべきと記されています。これには、他の生徒に悪影響を与えないようにする方法も含まれます。

Sensory and/or Physical Needs
感覚や身体に関する困難と支援を指します。一部の子どもや若者は、教育機関で提供される一般的な施設を利用できない、またはその利用を妨げる障害を抱えているため、特別支援教育が必要とされています。これらの具体的な困難や必要な支援は年齢とともに変化することがあります。視覚障害(VI)、聴覚障害(HI)、または多感覚障害(MSI)を持つ子どもや若者は、学習にアクセスするために専門的な支援や機器を必要とすることがあります。MSIを持つ子どもや若者は、視覚と聴覚の両方に関する困難を抱えています。身体障害(PD)を持つ一部の子どもや若者は、他の子どもたちと同じ機会を得るために、追加の継続的な支援や機器が必要となることがあると記されています。

学校のSENに関する相談窓口

Maintained Mainstream School(地方自治体から資金提供を受けている主流学校)、Mainstream AcademyフリースクールにはSENCOが配置を配置する義務があります。Independent schoolも多くはSENCOを設置していますが、Maintained Schoolのような法的義務はありません。
学校に配置されるSENCOにはいくつかの資格要件が求められます。2024年9月より規則改正し、Mainstream School(Maintained, Independent, Academyなど)に配置される全てのSENCOに国家専門資格NPQを必須資格として取得を義務付けました。
 特別支援に関する基本的なやりとり・相談窓口はSENCOとなります。

SENのサポート

※学校の種類によってはこの枠組みに従う義務がない教育機関も存在しますが、こちらではChildren and Families Act 2014 および SEND 実践規範で支援について定められている「Maintained Mainstream School(いわゆる公立現地校)およびMainstream Academy School」の例を基に説明します※ 
★教育システム・学校の種類についてのページは現在情報見直し・更新中★

特別支援介入の前段階で学校がするべきこと
SENがある、またはその可能性のある生徒に対応する最初のステップは「個別の生徒に合わせた指導が行われること」です。追加の介入・支援は、質の高い授業が欠けている場合には補うことができないとされています。

特別支援介入の決定まで
特別支援教育を提供するかどうかを決定する際、生徒に関わる教師やSENCOは、その生徒の発達や上記のSENの具体的な内容・分野に記された4つの分野に関連する学校内で集めたすべての情報と、全国的なデータや進捗の期待値を照らし合わせて考慮するべきでとされています。
その際、生徒とその保護者と早期に情報共有を行い、特別支援の必要性について検討がなされます。このプロセスに当たっては、生徒と保護者の意見や希望は重要な意見の1つとして考慮されます。

特別支援介入のプロセス
生徒が特別な支援が必要であると判断された場合、学校の介入が始まります。
このサポートは、SEN Supportとして定義されています。
SEN Support はChildren and Families Act 2014 および SEND 実践規範を枠組みとして、学校や自治体が持つサポート体制や資源の中で行われます。

このSEN支援は、4つの段階からなるサイクルの形で行われる「段階的アプローチ」として知られており、詳細なアプローチや頻繁な見直し、専門的な知識を活用し、次のサイクルで支援を調整していきます。

1.評価(Assess)
生徒が特別支援を必要とするかを判断する際、学校では子どもを一定期間観察し分析する必要があります。その際はSENCOが主体となり、情報収集やアセスメントをしていくことになります。まず、生徒自身・クラス担任(Class Teacher)・他の科目を担当する教師・保護者などそれぞれの立場からの意見を基に、なおかつ他の生徒との比較、全国的なデータも加味しながら生徒の現状や抱える問題について明確にしていきます。場合によっては、すでに医療や社会福祉の専門家などの外部機関(発達支援関連:地方自治体のチーム、医療関連、言語・作業療法士など)が子供や若者に関わっている場合は、それらのアセスメントも踏まえる必要があります。これらの専門家も、評価を支援するために学校と連携するべきとされています。もし生徒のアセスメントや支援において新たに専門家の介入が必要であると判断された場合、SENCOは保護者の同意を得て必要な職種へ相談をする必要があります。これにより、支援や介入が生徒に合ったものでるか、状況が改善されているか、実施された介入とその効果に関する明確な記録が得られるようになります。

2.Plan(計画)
生徒にSENサポートを提供することが決定された場合、学校はAssess-Plan-Do-Reviewのプロセスを個別支援計画(学校によって名称は異なりますがISPやIEPと呼ばれていることがあります)として作成し、保護者はその計画内容を確認し同意する必要があります(学校によってはSEND Supportのに関する説明・同意の保護者会が設けられる場合があります)。生徒と関わるすべての教師や支援スタッフは、対象生徒のニーズ、目指すべき目標、提供される支援、必要な指導法やアプローチを共有すべきとされています。
一般的とされる計画の主な内容は以下の通りです
・アセスメント内容
・実施される介入、およびサポート
・支援の結果として期待される子供の変化・目標
・明確なレビュー日

3.Do(実施)
学校は個別支援計画の実施に関わるスタッフ(クラス担任(Class Teacher)や他の科目を担当する教師など)と計画内容を共有し連携しながら行う必要があります。SENCOは、生徒に関わる教師・スタッフをサポートし、支援の効果的な実施に関するアドバイスを提供すべきとされています。

4.Review(評価)
計画時に定めたレビュー日に、SENCOやスタッフが計画に沿って実施してきた支援結果をもとにした現状に関しての再評価を行います。その際には、生徒や保護者の意見も取り入れるべきとされています。ここで計画内容の変更が必要と判断された場合は再アセスメントともに計画の修正案を作成し、新たな計画をもとにした支援・介入の実行、レビューというサイクルを繰り返していきます。

学校は保護者と生徒の現状や支援状況について定期的に話し合い、今後の方針を共有しそれぞれの役割を明確にするためにも、学校は、少なくとも年に3回は保護者と面談を行うべきであるとSEND実践規範には定められています。学校はParents Evening(保護者面談)などでその機会を設けています。

学校内でのSEND SupportからEHCPへの移行

学校で上記のプロセスを踏みサポートを行っているにもかかわらず、生徒に期待される変化が見られない・学校の提供できるサポート資源を超えて支援が必要になると学校が判断した場合、次のステップとしてEHCPの取得へと移行する場合があります。
EHCPは地方自治体へリクエスト申請し、SENCOや自治体、他の専門家と協力しながらプロセスが進んでいきます。
EHCPを取得した場合、少なくとも年1回のレビューがあり、内容を見直します。
(EHCP詳細についてはこちらをクリック)

EHCP: Education Health and Care Plan
25歳までの子供または若者の特別な教育ニーズに対し、彼らが必要とするサポートを説明する法的な文書です。

SENポリシーSEN Information Report

SENポリシーとSEN Information Reportの違い
SENポリシーは学校のSENに関しての方針や支援の全体像を示す基本的な枠組みSEN Information Report:SENポリシーに記載されている内容が実際にどのように実行されているかをより具体的に説明するための文書
Children and Families Act 2014 Section69およびSEND実践規範

SEN Information Reportについて
Maintained School(Special Schoolを含む)およびAcademyの運営員会ではSEN Information Reportの作成および開示が法律およびSEND実践規範により義務付けられています。
SEN Information Reportに関しては、毎年見直し・更新・ウェブサイト上に開示する必要があります。
SEN Information Reportを基にしたデータは地方自治体とも共有され、連携に役立てるとともに、イングランド教育省が管轄するSENに関する統計:Statistics: special educational needs (SEN)にも反映されます。

以下は、SENポリシーSEN情報報告書の違いを表にまとめたものです:

項目SENポリシーSEN Information Report
目的SENに対する学校の理念、戦略、目標を示すSENポリシーが実際にどのように実施されているかを示す
内容学校のSENに関するミッションとビジョン提供されるSEN支援の具体的な詳細
法的義務や関連ガイドライン支援されるSENの種類、特定・評価方法(SENCOの名前と連絡先も含む)
スタッフの役割と責任保護者の関与方法、支援の具体例
モニタリングと評価の方法教育段階間の移行支援と成人期の準備、目標には進学、就職、自立した生活、社会参加が含まれる
SENのある子どもや若者への教育方法
・カリキュラムや学習環境
・支援スタッフの専門性と研修、専門家の確保方法
・SENのある子どもや若者が一般の生徒と一緒に活動できるようにする方法
・感情面や社会性を支援する方法、いじめ防止の対策
他機関(健康や社会福祉、地方自治体、ボランティア団体など)との連携
・保護者からの苦情対応方法
対象者主にスタッフ、理事会、主に保護者、地方自治体
更新頻度1~3年ごとの見直しが推奨されている毎年更新され、ウェブサイトに公開される
公開場所ウェブで公開されている場合が多いが、開示義務がない学校の種類によっては内部のみで共有されている場合もあるため要確認。学校のウェブサイトで公開
役割SENの全体的な方針を示すSENポリシーの実施状況を具体的に示す

学校外のサポート機関・専門職との連携

個別支援計画に加えてさらなる支援の必要があると判断された場合、もしくはEHCP取得のプロセスの中で外部の専門家が関与する場合があります。
具体的にどのように外部から専門家と連携するかについては、子どもの状況や学校の、自治体により異なります。

〈具体的な専門家〉
Educational Psychologis(教育心理学者)
Child and Adolescent Mental Health Services(CAMHS:児童青少年精神保健サービス )
Behaviour Support Services(自治体のSEN Advisory Teamなど)
セラピスト(言語療法士、作業療法士、理学療法士を含む)
・専門の教師や支援サービス(視覚障害や聴覚障害、多感覚障害、身体障害を持      つ子どもに対応する専門の教師を含む)
自治体のSEN Advisory Teamなど
セラピスト(言語療法士、作業療法士、理学療法士など)

学校へのSENに関わる資金提供について
Maintained mainstream schoolおよびはSENを持つ生徒一人当たりに対して、6000ポンドの予算を割り当てられます。この資金の使われ方は、学校に裁量が委ねられています。この資金以上の支援が必要になる場合、High Needs Funding(HNF:高ニーズ資金)からTop-up funding(追加資金)が地方自治体より支給されることになります。この追加資金はおもにEHCPへの予算として使われることが主ですが、自治体によりその詳細は異なります。
※直接保護者の方に関わるものではないため簡潔に説明しています。詳しい情報法は以下の参考文献リンクをご参照ください※

支援プロセスについて解説している信頼性の高い現地サイト
IPSEA:What are special educational needs(IPSEA)
IPSEA:How should your nursery, school or college help?(IPSEA)
Coram Child law Advice-Special Educational Needs(Coram)

参考文献リンク
Children and Families Act 2014
The Special Educational Needs and Disability Regulations 20142014 年    特別教育のニーズと障害に関する規則
Special Educational Needs and Disability(SEND )Code of Practice: 0 to 25 years【SEND 実施規範: 0 歳から 25 歳】
Special educational needs and disability (SEND) and high needs(政府)
Independent special schools and post-16 institutions(政府)
Local authorities: pre-16 schools funding(以下リンク政府:Education and Skills Funding Agency)
The notional SEN budget for mainstream schools: operational guide 2024 to 2025
Funding for high needs
High needs funding: 2024 to 2025 operational guide
High needs funding: 2025 to 2026 operational guide
Funding for different types of schools and settings